自明性の喪失

わたしは統合失調症は「自明性の喪失」の病だと思っています。

わたしが何かを行うと「それはダメだよ。」などという批判の声が聞こえてきます。
ある時は同席していた元妻に「今誰かの声がした?」と聞きました。
声は聞こえないという返事に幻聴だったんだなと納得しました。
ですからわたしは(特に否定的な)言葉が聞こえてきたら幻聴かもしれない、と判断を保留するようにしています。

本当に言われているのかもしれませんが、その言葉に振り回されるよりはましです。

そう考えるようになってから、病状ははっきり安定してきました。

最近わたしは幻覚だと思える出来事に数回遭遇しました。
ある時、就労支援センターの面談に予約して行ったら、事務所が閉まっていました。
チャイムを押しても返事がありません。
窓の中は真っ暗で人のいる気配がありませんでした。
わたしはあきらめて帰宅したのですが、帰宅時に就労支援センターの担当者から電話がかかってきました。
「待っているがどうしているのか?」という内容でした。

後日、就労支援センターに行った時に、入口を見直したら、私が見た窓の形と違います。
他のフロアを見てみたのですが、見たような入口はありませんでした。

このように自分の認識が信じられなくなるようなことが何回もありました。
認識そのものが自明ではない時にどのように対処したら良いでしょうか。

わたしは判断を保留するのが良いと思っています。
因果関係が明らかな認識の場合は信じても良いと思いますが、あいまいな認識は虚実の判断をいったん棚上げしておきます。
世の中にはわからないものもあるのだ、という態度が必要だと思います。

このような認識は人間の能力の限界に疑問を投げかけるものです。
世界は人間だけのためにあるのではないのですから、「謙虚な」認識が大切だと思うようになりました。